てくてく日和

Fiction&NonFiction 20代男一人暮らしの趣味ブログ

勇敢で優しい

昨日に続き 物語で書いてみる。

ぼくが子供の頃の話。

 

珍しく家族そろってイタリア料理を食べに行く事になったのは、土曜の昼の事。

 

しかし、車内で夫婦喧嘩が始まってしまった。我が家では日常的な光景だ。

 

兄弟は兄と妹とぼく。妹はまだ母の膝上。車が土手の路肩に止められ時、ご飯に行くのはしばらく後だろうと悟った。かなり喧嘩に熱が入っているようだった。


その中、嫌気がさした兄(当時小6)は車から降り、家とは反対方向に向かって歩いて行った。

 

どちらも負い目を感じたのだろう、

父も母も兄を止められなかった。

 

扉は開いたまま、ぼく(当時小1)の目には黙々と歩く兄の後ろ姿が見えていた。

 

この中で兄の気持ちが一番よく分かるのはぼくのはず。兄を追うか、車に残るか、わずかその数秒、まるで生きるか死ぬかを迫られる気持ちだった。

 

ぼくは兄を追った。車を降りる時、母親は500円玉をくれた。

 

小1のぼくには大金だ。

ぼくは走って兄に追いつくも、何と声をかければ良いか分からずその500円玉を「これ、お母さんが。」とだけ言って渡した。

 

兄がどこに向かっているかは分からないが、大股で歩く兄の斜め後ろを早歩きでついて行った。

f:id:TekuTekuLife:20210321184031j:image

結局5kmほど歩いた。

調べてみると5kmは大人の足でも徒歩30分ちょっと。小1のぼくにとっては 一県か二県 超えた気になるほどの長旅で、とにかく歩いた。しかし、これは残念ながら行きしなの話。帰りには、ぼくは力尽きる事になる。

 

何を考えて歩いていたのか。

本当に会話は無かったのか。

何も覚えてない。

 

ただ、歩いた先にあったのはいつもお母さんが車で連れて行ってくれる、大きなショッピングセンターだった。

 

子供にとって車で出かけると言うのは、車に乗り込み、時間が経ち、降りれば目的地。というような感じで、半ばワープしているような体感でいた。まさか歩いて行ける場所とは思っていなかったので、その大きな看板が見えて来た時には少し困惑したのを覚えている。

空調の効いた店内はまるで天国のようだった。

 

兄はぼくに少し待つように言うと、マクドナルドでハンバーガーを1つ買ってきた。

 

兄はハンバーガーを2つに割ると、お肉がはみ出している方を紙に包んでぼくに渡し、自分はその残りを手で持って一緒に食べた。

 

子供ながらに兄の優しさには気づけたつもり。

この頃には2人とも、昼間の喧嘩の事など覚えていない。ショッピングセンターを探検した。

f:id:TekuTekuLife:20210320225640j:image

帰る時には陽が沈みかけていた。

帰路につき、ちょうど半分を越したあたりだろうか、兄はコンビニに寄りアイスキャンディーを1本ずつ買って来てくれた。

今度はひとり1本。

食べながらさらに歩き、ぼくは力尽きた。

 

兄はぼくをおぶり、立ち止まる事なく歩いてくれた。特に急いでいる様子はなかったが、これ以上遅くなるのは良くないと考えていたのかもしれない。

 

またしばらく歩き、ぼくが兄の背中でうとうとしていると、自販機の前で兄の足は止まった。お店の前に並ぶ4台ほどの自動販売機。兄はぼくに好きな飲み物を選ばせてくれた。

おそらく500円の最後の残りだろう。

 

そこからは また2人で歩き始め、それでもかなりかかってやっと家に着いた。

 

ぼくの中ではワープして着いていたショッピングセンターも、兄は外の景色を見ながら車に乗っていた事がよく分かる。

 

残念ながら、この記憶は土手から自分の家が見えてきたところまで。

 

そのあと家に帰った時の記憶はよく覚えていない。その後 妹はご飯を食べに行けたのか、それも覚えていない。

ただ、この出来事がハッピーエンドで終わった事は覚えている。

 

きっかけはなんであれ、勇敢な兄の姿を肌に感じ、その優しさを肌に感じた土曜の夕暮れ。

今思い返すと背筋が正される良い思い出だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後まで読んでいただき

ありがとうございました。

 

毎日 19時に更新してますので、

また立ち寄ってください(^^)!

 

読者登録もよろよろで~す♪