てくてく日和

Fiction&NonFiction 20代男一人暮らしの趣味ブログ

お金より大切なもの

以前書いたことのある記事ですが、リメイク。

 

木々に囲まれる3階建ての豪勢な家。

2階部分には広いデッキがありそこからは直接外に出られるように階段がつながっていた。

 

当時、山の中の別荘地に住んでいたぼくは朝早く、どこかでコーヒーを飲めないかと車を走らせていた。通りは広いものの木々に覆われており、ゴルフ場なんかも沢山ある。もともと車通りの少ない道なのか、ただ朝早かっただからか、とりあえず走っている車はぼくだけだった。

すると一つの建物の前、通りに面した所に控えめな小さな看板に「カフェ」と書いてあるのを見つけた。3台止められる砂利の駐車場に車を止めた。

 

その建物の1階で老夫婦がカフェをやっているようだ。

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客はぼく一人。コーヒーを頼み2人と他愛もない話をしていた。

 

趣味を聞かれたので、自分がサックスを吹いている事を話すと、おじいさんはジャズが好きとの事。この喫茶店で友人らと、日程を合わせてはよくセッションをするんだと話してくれた。

おじいさんは、コントラバスを弾くそうだ。

 

しばらく話すと おじいさんが「すまん。まだ2人とも朝食を食べてなくて、2階の自分達の部屋で食べてきてもいいかい?まだゆっくりしていって良いからね。」っと言い残し、老夫婦は2階へと上がっていった。

 

部屋の中のスペースは狭く、入れても3人、4人 入ったら窮屈に感じるほど。家具は全てアンティークで、どこかヨーロッパの建物の中にいるような気分になった。

 

少し慣れない雰囲気だが、窓の奥に見える新緑のおかげか居心地の良さを感じていた。

 

9時開店と書いてあったけど、、
少し早かったかな?

 

ぼくはコーヒーを飲み終えたが、2人はまだ2階におりお金が払えなかった。


ぼくは階段の下から、
「すみませーん!」と何度も呼んだが、2階から物音は聞こえるものの、返事はない。

少なくみても5分は粘って下から呼んだが諦めた。

 

ぼくはどうにもできないので、やむなくコーヒーのソーサーの下に1000円を挟み帰ることにした。コーヒーの値段は500円だったが、お釣りの事は気にならなかった。

 

そして店を出て車に乗った時、

「おーーーい!」2階のデッキからおじいさんが猛スピードで駆け降りてきた。

 

ぼくは どろぼう呼ばわりされるのではないかと、まだ遠いおじいさんに向かって「お金はソーサーの下に挟みました!」と叫んだ。

 

するとおじいさんはぼくの声なんて聞こえてないようで、息を切らしながら
「嫁さんがゆずのジャムを作ったから持っていきなさい。」と言った。

 

ぼくはあまりにも拍子抜けするおじいさんの言葉に、もう一度「お金はソーサーの下に挟んで、細かいのがなかったので1000円札を挟みました!」と言う。

するとおじいさんは「それは悪い事をしたね。すぐお釣り持ってくるから!2階に居たから払えんかったんやね!すまんね!」っと声を大きくしながら店の中に入って行った。

 

ぼくは、人生で初めて無銭飲食で怒られるのかと思ったが、老夫婦はそんな事よりも、手作りジャムを持っていきなさいと言った事に驚いた。

 

息を切らせながら、2階から駆け下り、大声でぼくを呼び止めたのはジャムを渡すためだったのだ。

 

木々に囲まれるカフェでの出来事。

 

世の中捨てたもんじゃないというのは、こういう時に使うんだろうなと心の中で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後まで読んでいただき

ありがとうございました。

 

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