小さな背中
ある日の昼過ぎ突然車内で起こった夫婦喧嘩。
お互い過去の出来事を掘り返しては
謝る事なくヒートアップ。
運転を放棄した父は
車を路肩に止めて喧嘩に熱が入った。
その中、嫌気がさした兄(当時小6)は
車を飛び出していった。
両親は兄の気持ちを察してか、
無理に戻るようには言わなかった。
扉は開いたまま。
ぼく(当時小1)の目には
歩いて行く兄の後ろ姿が見えていた。
兄を追うか、車に残るか、ぼくにとっては生きるか死ぬか、迫られらように感じた。ぼくは兄を追う事にした。車を降りると、母は500円玉を渡してくれた。
兄は黙って家とは反対方向に歩いて行く。結局5kmほど歩いた先にあったマクドナルドで1つのハンバーガーを買い、2人で分けて食べた。
家族で昼ごはんを食べに行く所で、まだ何も食べていなかったのだ。
親の不仲まじまじと見せつけられた後。
兄と話す事は何もない。
帰りにはアイスキャンディーを1本ずつ。
もう辺りは暗くなる中、クタクタで歩けなくなったぼくを兄はおぶって、ひたすら歩いてくれた。自販機の前、ぼくの飲みたいジュースを買ってくれた。
不思議とその日、
2人で家に帰った後の記憶はほとんどない。
ただ、怒られはしなかったことだけは覚えている。
子供というのは不憫な生き物だ。